雪女の背に続け
入って早々に若い鬼を見つけた。
秀明の姿を目に入れた瞬間に、その表情は恐怖へと変わっていく。
「逃げるなよ」
「ひっ……!」
背を向けようとした時に、秀明の言葉が突き刺さる。
鬼をビビらすとは何事だキサマ。
「島中の鬼を集めろ。町の百鬼夜行の長が来てる」
「は、はい!」
鬼に命令して、使い走らせる。もうこの男が暴君として君臨しているのかもと思う。
それは有り得ないのだが。
少しして、すぐに島中の鬼たちが集まった。
秀明が来たというだけで、鬼達の顔は恐怖一色に染まる。
どれほどの事を秀明はこの島でしてきたのだろう。知っているのは鬼達と秀明だけだ。
「町妖怪の百鬼夜行、束ねる長の話を聞け」
静まりかえるその場。秀明の恐怖によってその場の空気が支配されている。
そんな中で、冬矢は言葉を出す。
「俺はお前たちに約束しよう。花宮秀明の鬼狩りを禁じさせると」
瞬間、鬼達はどよめいた。
秀明に注目が集まるが、秀明は何も言わず、ただ鬼達を睨みつけていた。
「ほ、本当に……止めさせられるんですか」
鬼の一人が恐る恐る尋ねる。
「安心しろ。俺が約束させた。もうお前らに危害は加えさせない」
優しい言葉。鬼達はまだ状況がつかめずにいる。
だが、冬矢の言葉の意味を徐々に理解し始めた時、
鬼達は狂喜乱舞した。踊り狂い、秀明の恐怖から逃れられることを涙を流して喜んだ。