雪女の背に続け
店長がいないなかでも、喫茶店・居酒屋は通常営業。
喫茶店では接客係に恭子と新しく雇われた小夜子が動き、
裏のキッチンでは由月が一人で任されたりと明らかに人手不足。
「……」
「だめですよぉ、恭子さん。さぼるなんて」
新入りの小夜子にとがめられ、恭子も気分が悪い。
だが店長の冬矢目当てに来る客(白峰とか)が来ない分、客は少し減っている。
しぶしぶながら、恭子もちゃんと働いてた。
「いらっしゃいませ」
そこにまた客が入ってきた。
小夜子が愛想よく挨拶するのを通り過ぎ、客は無愛想にカウンターにつく。
「……」
「!」
その客の顔を見たとき、恭子の顔が固まる。
すぐに恭子は平然とふるまうが、その指は動揺で震えていた。
「ご注文は?」
「アイスコーヒー。あと、カツサンド」
「かしこまりました」
小夜子はそんな恭子の異変に気づくことなく注文を取る。
そのまま何事もなくその客は、カウンターに座り、メニューを食べて会計して帰った。
「どうかしました?」
閉店間際になって、ようやく小夜子は恭子の異変に気づく。
恭子は何も言わない。
「……」
そのまま存在を消して、どこかへ行った。
「あ……っ」
首をかしげる。
恭子に何があったのか、小夜子は皆目見当もつかなかった。