雪女の背に続け
山へ踏み込む。
仮面をかぶる。
茂る木々は日の光をさえぎり、闇を作っていく。
闇の中で、トラツグミの体は変化を遂げて行く。
人の姿が、妖怪の姿へと変わってゆく。
背には黒い翼が生える。闇のように黒い羽根はカラスよりも深い黒
かぶった仮面は猿の面。不気味に笑う猿の顔
尾が生える。それは蛇。血走る目が周囲を睨みつける。
「……」
踏み出すたびに木々を枯らす。
生命を奪う息吹。周囲を闇に染めて行く。
鵺となり、山を進む。
雪女達は彼を見たとき、恐怖を感じた。妖怪が妖怪を恐れた。
家にこもり、彼が過ぎ去るのを待つ。
トラツグミは進む。
山の奥、退魔の泉へとむかう。
日が沈んでゆく。
冬矢に闇が音を立てて忍び寄る。