雪女の背に続け

「なっ……」

驚愕する二人。
その二人に気付いた冬矢。


「なんでいるんだ? 約束の日はあと三日だろ?」

「……いや、今日がその約束の日だ」


首をかしげる冬矢に、恭子が説明する。
またさらに怪訝そうな顔をするも、冬矢は少し伸びをして泉から上がった。


「……驚いたな。まさか退魔の泉を凍らせるとは」

「えっ……?」

先ほど起きた現象に感嘆を漏らす。
だが、身に覚えがないように冬矢は目を点にする。


「分からないのか?」

「いや、ずっと気を失っていたから」

あの日、トラツグミに妖気を送り込まれて気絶したことを思い出す。
おぼろげな視界に移る人影。それを恭子だと思っていた。


「まあ、いいか。で、女王さん、これは結局どうなのかね? 合格ってことでいいかい?」

不審な事はあれど、すぐに女王に向き直る。
女王はまだこの事態をのみこめず、呆然としていた。


「……あ、ああ……そう、ね……」

完全に上の空。
事態をどうとらえていいのかは分からない。

「泉を凍らせるなんて、あの人以来だわ……。血は争えないという事かしら」

「……?」

何やらぶつぶつと言っている。
ただ冬矢は返事を待つだけだ。
気絶したという事はあれど、十日間この泉に耐え続けた。
女王はじっと、冬矢を見つめる。


「認めましょう。白魔山の全妖怪は、雪代冬矢。あなたを長とし、あなたの百鬼夜行に連なりましょう」


少しだけ、冬矢の中に、彼の母親の面影を見た。
そして、柔らかにほほ笑んだ。


こうして、白魔山の雪妖怪たちは冬矢の百鬼夜行の傘下に入ったのだった。
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