雪女の背に続け
早速店では宴の席が開かれた。
そこに女王も招かれる。
「……」
すこし町妖怪のノリに、ついて行けずにいる女王。
それを気にせず、宴会芸を始める町妖怪。
はたから見ればかなりシュールだ。
「へぇ? 泉の水を凍らせた?」
それをよそに、秀明はカウンターの端で恭子の酌で飲み進めていた。
話の内容は、約束の日に起きた出来事。
「冬矢は気絶していたと言っていた」
「気絶、ねぇ……」
そしてちらりと冬矢を見る。
なぜか女王と飲み比べをしていた。
「なあ、恭子さん。約束の日の前に泉に行って冬矢に接触したか?」
「していない。余計な手出しは無用だと言われていた」
「……そうか」
秀明の酒を飲む手が止まる。
そして、その顔は真剣な物にかわり、考え込む。
「……嫌な予感がするな」
「どういうことだ?」
「冬矢から、何か大きな妖気を感じる。今はもう完全に抜けて痕跡しか感じられないけど、強烈な禍々しい妖気が冬矢の体を通ったのは確かだ」
「!」
恭子の目が鋭く変わる。
「トラツグミ……かもな」
秀明の言葉。
それが何者かは知っている。
山姥をそそのかし、冬矢を襲わせた黒幕の名前だ。
そして恭子はもう一つ、トラツグミを知っている。とても恐ろしいトラツグミの事実を。
「トラツグミの奴が噛んでるとなると、ちょっとのんびり交渉している暇ねぇぜ?」
「……冬矢にも、もはや黙ってはいられないか」
「だな」
二人は揃って冬矢を見る。
仲間たちに絡まれ困惑した表情をしていた。
これだけを見ると、平和なんだがな。