雪女の背に続け
「そのような妖怪はしらん。それに、わしはそのような妖怪には騙されぬ」
「……そうですか。ですがそれでも、お気を付けください」
そこで丁寧に頭を下げた。
今言えることはほぼ言った。
次に来るときには恭子に十分話を聞いてから。
そこでまた話をしに来るつもりだ。
向こうが折れるまで、訪れる。
何度も何度も説得するつもりだ。
平和的に。
「では、また後日改めて……」
「……次などない」
「それでも来ます」
にこりと冬矢は笑い、そのまま立ち去った。
それを止める者はいなかった。
ほほ笑みの中に冬矢は強大な妖気をにじませていた。
底知れない何かを感じさせる冷たい妖気。
その妖気に圧され、天狗たちは道をあけてしまった。
冬矢の背中をじっと見つめる大天狗。
「……ずいぶんと理想を掲げる若造だな」
ぼそりとそう吐き捨てた。