雪女の背に続け
壱 二代目の目的
「飲めやー歌えやー!」
「今夜は二代目のおごりじゃー」
居酒屋『百鬼夜行』では妖怪たちが食うわ歌うわ騒ぐわ。
みな冬矢の二代目襲名祝いの為に集まり、宴会を開いていた。
集まった町妖怪の目的はただ一つだけ。
祝いの席にかこつけてタダ酒にありつこうとしているのだ。
「ま、まあ……。遠慮をしれよお前ら」
祝いに来たというのも本当なために冬矢は冬矢で苦笑いをするしかなかった。
妖怪たちはすでに多くが出来上がり、酒もつまみもどんどんとなくなってゆく。
「洋子、変化しまーす!」
「やれやれー!」
勿論宴会ともなれば管狐のこの女が黙ってはいない。
自称宴会部長が早々と酒を片手に宣言した。瞬間的に周りの妖怪たちはわき上がる。
「何に化けてもらいたいー?」
「二代目!」
「二代目ー!」
「長髪の頃の別嬪な二代目ー!」
横ではこうして騒ぎ立つ。
呆れながら冬矢は手酌で酒を飲み進めた。
「こんな百鬼で大丈夫かこの町」
そんな問いかけに答える妖怪は、誰ひとりいなかった。