雪女の背に続け

「こんばんはー」

そんな大宴会にまた飛び入り参加が現れた。
それは人間だったが、妖怪たちは喜んで彼女を迎え入れた。

「冬兄、襲名祝いに来たよ。父さんからも祝い品預かってるしさ」

陰陽師の娘で冬矢の姪っ子の花宮陽がそのまま冬矢の隣に席をついた。
そして手に持っていた紙袋を座卓に乗せる。


「あっ! お酒とつまみだこのニオイ! さすが秀明さん、わかってる~」

嗅覚が鋭い洋子がすぐその祝い品に飛びついた。
遠慮もなく紙袋の中に手を突っ込んだので、そこはさすがに烏丸が強引に引っ張って止めた。

「悪い、陽。こいつ、完璧出来上がってるから許してやってくれ」

「お酒ぇ~。お酒ぇ欲しいのぉ! 飲みたいのぉ! アイラブお酒なのぉー」

引っ張られてもなお酒の匂いにつられて群がろうとする。
他の妖怪たちもその匂いを嗅ぎつけて群がり始めた。

「…………」

少し、冬矢は深呼吸する。
迷わず危険を感じ取り、陽は冬矢の後ろに避難した。
烏丸も同様に冬矢より後ろに移動し、その流れで気付いた洋子はすぐに群がる妖怪たちの奥に隠れて行った。



「ハァッ!」

大きな声で短く叫ぶ。
その声は冷気を帯び、一瞬にして妖怪たちの体温を大きく奪った。
酒も抜け凍えるほどの瞬間冷却。
体温急下降、それにつられてテンションダダ下がり。

「酒がまずくなる余興すんな」

冷たく冬矢は言い放ち、紙袋の中の祝い品を取り出した。
それから妖怪たちは常に冬矢のご機嫌をうかがいながら、
穏やかに、注意深く、お淑やかに宴を続けました。

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