Reality~切ない恋の唄~
私は、龍二先生の背中に向かって言った。

「ありがとうございました…」

それは、いつもの挨拶。

レッスンが終わった時に、必ず使う言葉。



龍二先生は振り返らない。

もう一度、先生の顔が見たい。

だけど…

私には先生の背中しか見えない。



「舞…、もっと強くなれよ。」

先生の声が少し震えてる。

この時、私は何かを悟った。



「龍二先生!!」

振り向いてほしくて、
先生の背中に呼びかける。



龍二先生はうつむいたまま、
何も答えない。



無言で片手を上げると…

一度も振り返ることなく、
静かに扉を閉めた。
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