Reality~切ない恋の唄~
「3番、高橋舞子 18歳です。よろしくお願いします。」

歌うのは、
オーディションの時と同じ曲。

龍二先生が『一番ましだ』って言ってくれたから。



小さな小さなライブハウス。

照明が明るければ、
一番後ろに立ってる人の顔が見えそうなくらい。



観客もそんなに多くない。

でも、
その中に社長とか業界人がたくさんいると思うと背筋が凍る…。



前を見ると、
お客さんがいるのが見える。

床を見たら、
龍二先生に怒られる…。



あまりお客さんの顔は見たくなくて、ちょっと上を向いて歌った。



左手の動きも
たくさん練習したのに、
指先が震えてる。



自分を取り戻そうと、
両手でマイクにしがみついた。



弱い自分に負けたくない。
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