門限9時の領収書
当時は恋愛感情もなく、単純に可愛い女子としか思っていなかった。
ちなみに洋平は結衣を一番に選んでいたのは秘密の話。
また服コの女子生徒はイケる女ランキングの上位を占めていたが、
彼女にしたいランキングにはあまりランクインしていなかった。
題材によって選ぶ感覚が変わる不思議。
もっとも、女子からすれば理不尽かつ腹立たしいほかないのだろうけれど。
余談だが、もっとえげつない(女子が怒るないしは引く)テーマもあったけれど、
洋平の良心が痛むので言わないでおく。
バレンタイン前、あの時はそんな可愛い子に話しかけられるので、
お気楽かつ単純な洋平は非常に嬉しかった。
なんで雅ではなく自分に話しかけられるのかはサッパリだったけれど。
一ミリずつ知っていく中、単細胞な為か可愛い可愛いとばかり思っていた。
しかし意味不明なメールをしたり、何も内容がないオチが滑る話をするようになってから気が付いたのは、
彼女は面白い人なんだということだった。
流れで選ぶ咄嗟なワードセンスが良いし、相槌の間合いが良いし、何より笑えて楽しかった。
――――どうやら洋平が恋に落ちたエピソードの独り言が始まってしまったらしい。
どうせ重要度は低いのだから、聞き飛ばしても構わないことだろう。
たくさん結衣と一緒に笑ううちに、なんとなく洋平は惚れていて、
なんとなく好きなのだと気付いた。
話が合って笑いのツボが同じで、波長が似ている。
それが好きになった理由の後付けかもしれない。
とにかく同じ時間を過ごすBGMとして、笑声が流れたら最高に幸せだ。
素面でここまで語れたら、高校生の彼氏としては完璧だろう。
聞き手が反応に困る素敵な恋愛論をウダウダ披露している彼に恥はないようだ。