門限9時の領収書
世の中、人は見た目ではないとか言うけれど、
第一印象や雰囲気が人間関係には肝心だと、人生経験が浅いながらに真剣に考えた結果、洋平は思っている。
直感。見た目の要素から先入観を持つのは当たり前のこと。
そうやって自分が勝手に作り上げたイメージ像から生まれるのが、俗に言うギャップなのだから、
好きな理由なんて好きになってから一つ一つ増やしていくものだと思う。
だから時間が経てば経つほど、ますます好きになるのだろう。
そして、もちろん嫌なところも出てくるからこそ、
高め合おうと努力することで、好きの度合いの質が上がるのだろう。
それはそうと、自分はまだまだ精神的に幼いので、そういう深い話は不得手だし、
尚更愛を語るつもりはない。
要するに、結衣への想いが永遠だと思っても、絶対に口にはしない。決めている。
それはあの二人を見ているせいなのかもしれないけれど、
熟成された人が音にして初めて意味があるような気がするのだ。
愛とか夢とか人生とか熱弁している十代に対して、
自己演出に入っていると見てしまう洋平は、なんて心が淋しい奴なのだろう。
――そう、達見に優れた皆なら薄々感づいていると踏んでいるのだけれど、
素直ではない彼は、なにかと感動できない人間。
皆が切ないと言う場面でキョトンだし、皆が良かったと言うシーンで白けているし、
つまり、自分は皆みたいに綺麗ではなくて、くだらない人間性なのだろう。
そんなしょうもない洋平が恋をした。
長い髪が綺麗な子。
――切磋琢磨して好きを増やしていけたら理想だと思うも、
絶対に泣かせない自信はない。
ただ笑わせることにかけては誰にも負けない。
彼女を想う気持ちは誰にも負けない。
結衣を笑顔にさせるのは、自分の役目だから。
……別れたらどうなる? というシビアなツッコミは聞こえないフリをしておこう。