門限9時の領収書
初恋は小学六年生の時という人並みなメモリー、あの頃は付き合うとか付き合わないとか発想がなかった。
ただ好きなだけで満足で、今はというと――?
寝返りを打てば、髪の毛が遅れて踊る。
洋平は自分の耳を引っ張り一度深い息をした。
目の前に広がる暗闇の中、やはり浮かぶのは(彼氏目線で)可憐なあの子。
真夜中の空は誰のもの?
んー……田上さんって。
血管透けてるし
皮膚薄いのかな、しろい……
痕目立ちそ
「……?、」
あ、と?……
無性に情けなくて一気に洋平の顔が真っ赤になった。
ピュアをなぞろうが、結局若いが取り柄の同級生と同等だ。
せめてキスをイメージしよう、なぜ違う心配をしているのだろうか。
全然爽やかではないじゃないか。気色悪い彼氏で申し訳ないばかりだ。
もっと紳士になりたいし、もっと違う愛し方をしたい洋平――生温い人生を歩んできている為、当然“愛”など知らないけれど。
「……マイペース、」
呟いた言葉は顔にそのまま落ちてくる。
誰か幼稚な彼に共感してくれやしないだろうか。
ボランティアをした時は誰かに褒められることを前提にしているし、
誕生日プレゼントを渡した時は当然自分の時も貰えると期待しているし、
つまり――結衣と恋愛をしている洋平、
キスどころか体という見返りを求めている現状が、酷くさもしい気がするのだ。
矛盾ばかりして、自分の本心が分からない。