門限9時の領収書
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それは突然だった。

家に泊まらせてほしいと懇願された。

切羽詰まった顔を前にすると、なんだか頷くしかなかった。

本当に急で、準備なんてしていなかった。


  ……。

アルバイトの為、自分が空けている部屋に人が居るなんて変な感じがした。

けれども分かっていたような、……こういう日が来ると予感していたのかもしれない。


 、なんであんな顔?

 ……。

軽やかな音を立てては弾け、輪郭を泡が覆い尽くし、一旦深く沈むとしばらくして浮遊する。

粘つく足元と光る視界、天ぷらを揚げる行為をかれこれ一年近く続けると、なんだか変な感じだ。


人生で消費する揚げ物量をとっくにオーバーしているだろう。

耳で判断がつくようになる不思議。
(と、知ったかぶるのが洋平の長所であり短所である)


ほくほくしたサツマイモ、意外にあっさりしたとり天、子供に人気なハム玉子、サラリーマンの定番かぼちゃ、

学生ご贔屓お財布に優しいちくわ……全部美味しいから人気だけれど、うずら串も捨て難い。


 …………。

帰ったら人が居る、そう思うと幸せだった。


棚に並べた商品の隙間から厨房の中を覗き見る視線に気付き、洋平は顔を上げる。




『近藤!』


――こういう日が来ると分かっていた。

田上結衣。大好きな人。
付き合って三ヶ月。
偽りの理性なんて所詮十六歳、効果を持たないことを。


奥歯を強く噛みすぎて耳の後ろの血管が切れてしまいそうだった。

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