門限9時の領収書
「ね、ウケるー」と、再度尋ねられるも、洋平は相槌に迷った。
……なんだっけ
なんの話してんだっけ
ベストな返しがさっぱり浮かばない。
むしろ抑揚にさえ可愛いと反応してしまうなんて。
語尾を伸ばすというよりは、全体的にゆったりとしたペースで話すのは作っている訳ではなく、
小学生の時に口調をからかわれてコンプレックスだと言っていたし、
A組の知り合いに結衣と同校出身の者が居たが、その子が話すにも昔から甘えたな声色だったようだ。
(だからやっぱりステレオタイプなぶりっ子とは違うみたいだ)
可愛い声、例えばパフェがお喋りをするなら、彼女のようなメロディーをしているのだろう。
――……甘い甘い魔法。
……、たぶん……
どんな声なんだろ
会話の内容を思い出すはずが、再び妄想のお花畑の世界へ行く頃――
不満そうに眉を寄せる結衣の表情に視界を奪われた。
いけない、今は妄想する場合ではない。彼女とつかの間の学内デートをしている最中じゃないか。
一ヶ月前からどうもおかしい。
改めて状況を整理しよう。
今はお昼休みランチタイム、ここは階段、横には付き合って三ヶ月ちょっとの自慢の(可愛い)彼女。
生温い風が窓からお説教をしているらしい。
冷静になれと、頭を冷やしてくれる。