門限9時の領収書
毎回デートの度に彼女とプリクラを一枚撮ることが習慣なのだけれど、
典型的な女子高生のように手帳にシールを収集する趣味はない為、
正直 眺める以外にいまいち使用方法が分からないでいる洋平だ。
(だからといって携帯電話に貼るのは、彼女居ますと主張する感じが恥ずかしいし、
電車の定期に貼るのもキャラではないし、また お財布に貼るのも照れ臭く……
結局 台紙から剥がしたことはない。せいぜい長財物のお札を入れるところにしまっておくくらいだ)
テナント募集の看板、駅から徒歩三分のマンション、電車を眺める親子、
二十四時間営業のスーパー、全国展開で見飽きた不動産屋の色、
流れていく景色は薄暗くなるも、夜と呼ぶには やはりまだ早い。
つまり、一般的な学生の恋人たちがイチャつくにはぴったりな頃合いだろう。
――当然、自分たちも。
時間を言えば門限がない男の子の自分とは違い、彼女は当たり前に年頃の女の子なので、
アルバイト以外は九時が門限だと言っていた。(冬は八時半なんだとか)
躾にきっちりとした家庭なのかと、少々気を引き締めたのだが、
『夜に出歩くのは危ないから、遅くなるのなら一定の場所でオールにして始発で帰れ』と、主張するのが彼女の両親らしい。
――従って、いつも遅くなる時はオールをするのだと言う彼女・田上結衣は、ユルいのか堅いのか不明である。
その辺、まだ知り合って間もない為、今後探ろうと洋平は秘かに思っている。
(早い話その場に男友達が含まれているのかいないのか、という点。
万が一異性が居るならば少しショックだし、ヘタレな彼は二週間くらい凹む予定だ)
それにしても、自まつ毛のように見える自然なマスカラテクニックには驚かされてしまう。