門限9時の領収書
ファッション関係にひどく興味があり、また通学定期で街中まで行けるのがオイシいと思った為、
洋平はわざわざ遠いあの学校を選んだ。
早起きが辛く、本当は無難に文系の県立にすれば良かったと後悔したけれど……
――だから田上結衣に出会えた。
田舎住まいで良かったと心から思う次第である。
こんな風に昔の自分の行動が、後々大きく影響をきたすのだから、
今を頑張らなければと思える。
……ほら、また心性が劣っている洋平による意味不明な知ったか法則が説かれた。
半分以上聞き流してもなんら支障ないけれど、
まあ彼が気の毒なので少し耳に入れてくれたならありがたい。
しつこくローカルネタを続行しよう。
都会組には分からないだろうが、地方組はアルバイト選びだって苦労しているのだ。
お店自体が少ないので仕事先の候補が、まず少ない。
(最近は大型ショッピングセンター効果で地域に活気が出てきたので変わったけれど)
その上、わざわざ募集しなくともお客さんが少ないのだからお店は回転する。
つまり、学生の小遣い稼ぎの手段が極めて少ないのだ。
学生の本業は勉強だと言われるが、アルバイトも重要だと洋平は感じている。
というのは敬語や上下関係が身につくし、お客さんと接することで社会との付き合い方が学べるし、
普段なかなか関わらない大学生や年上の人と話すと勉強になるし、
また当たり前だが、お金を稼ぐ大変さやだるくてサボりたくなる心情など、
人として成長する面ばかりだ。
高校生は中学より中身が賢くなるし、けれど大人とは呼べない曖昧な……
ひどく貴重な時代、この三年間の言動が未来の自分を作り出すのだろう。
――と、ツッコミ所満載な痛々しい独り言は続く。
さりとて彼のピュア(変)な部分を探せば意外と面白いはずなので、ぜひ満喫していただきたい。