門限9時の領収書

そんな中で、駅内のうどん屋は比較的新しく人気のあるチェーン店のせいか、

あるいは郊外ショッピングセンターによる活性化を先取りして住民が増えたせいか、

お客さんの入りが良い為、地元の高校生と大学生の恰好のアルバイト先となっている。


平日は週ニで夕方五時から九時四十五分まで、日曜日には朝から夕方までの割合でシフトを組んでいる。


『コンコンかき揚げ急いで』

「はい」

ナイトマネージャーのオバチャン(普通に綺麗な人)から指示を受け、

洋平は自宅では後始末が面倒だからしたくない天ぷらを揚げていた。


慣れない頃は地味に火傷をしたものだが、もう働きだして一年が経つので、

コツも身についたし、揚げ物の気持ちが分かってきたかもと自惚れている。

そしてまた、かき揚げは切れ端を上手に利用できるので、地球にやさしいと洋平は意味不明な解釈をしている。


本社のコンセプトは女性やファミリー客より、仕事をしている人をターゲットにしているのだけれど、

なぜか『カッコイイ』とか『イケメン』とか浮ついた単語が店内を賑やかに活気づけていた。


出来立ての野菜かき揚げをバッドに移し、

「揚げ立てですよー、今出来上がりましたー熱々ですよー」と、お客さんに向かって宣伝をする。

あんまり誰も聞いていないけれど。マニュアルだから従う。


次は何をしようかとチェックしていると、『また来てるね、あの子ら』と、

アルバイトリーダーの女子大生に話しかけられた。


「はい?、ああ、あの子らですか?」

視線の先を追うと、イケメンイケメンといつも(煩いくらい)はしゃいでいるので、

なんとなく覚えてしまった常連客である女子中学生の四人組が居た。


接客業は同じ曜日や同じ時間帯だとよく来る人と認知するのだが、

結衣いわくお財布と顔をセットで覚えているのだそう。

< 56 / 214 >

この作品をシェア

pagetop