門限9時の領収書

週一・二の割合で現れる――うどん屋なのにおにぎりしか買わない軍団。

ミスなんとからしい綺麗な女子大生は、『コンコン目当てだね? カッコイイから』と悪戯に笑う。

「おっ、じゃあ俺ってば看板息子なんですかね?」


――カッコイイを真に受けるのは、せいぜい高校一年生までだ。

社交辞令、ヨイショ、ご機嫌取り、リップサービスならまだ良い方で、

歳を重ねると口癖のように男にはカッコイイ、女にはカワイイと無意識に発音しがちだ。


『コンコンに彼女居るって知ったら売上落ちるねー? あっちの女子高生たちもコンコン目当てだし?』

「あはは、めっちゃモテ期じゃないですか俺、はは」

店内に居るのは性別に関係なく若いお客さんがほとんどだ。


女子大生やオバチャンはキレイドコロって奴で男性客を虜にする。

そう、なぜ繁盛しているのかというと、明らかに美人店員が働いていることが影響しているからなのである。


そして、

返却口に食器を戻した女子高生の二人組がこちらまで歩いてきて、

『美味しかったです! ご馳走様でした!』と、

少し顔を赤らめて言ったかと思うと走り去った。


 …………。

「はい、ありがとうございます」

マニュアル通りに笑顔を振り撒く洋平は、純粋ではないので知ってしまっている。

女性客は自分目当てに通っているということを。

たった今、高校生ノリのアプローチをされたということを。

彼女らは別に美味しかろうがなかろうが、お客様という立場を利用して、接近してきたことを。


そう、彼はまあまあ女子ウケが良いルックスなのだと分かってしまっている。

学校ではイマイチでも、雅が傍に居ないアルバイト先や街中ではナルシストに言うなら、

チェックされる部類だと自負していたりなんかする。

あらまあ、引くことなかれ。
これが一般的な男子高生である。

< 57 / 214 >

この作品をシェア

pagetop