門限9時の領収書

一定のリズムを保つ時計の針が気になる、きっと後一時間もすれば彼女からメールが入るはずだ。


「でー……、さ。長男からお願い、が。ありまして。土曜日さー弟くん良平くんをー連れて出かけてほしんですけど?」

弟の良平はお客さんが来たらテンションが上がって、

それだけなら子供だからと我慢できるが、

洋平の部屋に入り浸り友人の膝に乗ってひたすら邪魔をするから、

(ゲームに参加したりお菓子を食い漁ったり)、

彼女が訪ねてきたら酷いことになりそうだと伝えた。


『、何時に来るの』

ちらりと母親を見ると、先程よりは柔らかな目に変化したように思う。

  ……良かった


刺々しいのは過去の自分に対してで、今の恋愛を否定する気はないらしい。

なんだかんだで結衣の存在をたくさんの人に自慢したい。

だから友好的な母親の態度が洋平には嬉しく思えた。


十一時くらいに来て帰宅は六時半の電車だと告げると、

やや困ったように眉間に皺を刻み、母親は時間が潰せないと零す。

年頃の男女を密室に残すことが腑に落ちないのだろう、そう出ることは承知していた。


となれば高校生……――頭を使えば切り札がある。

< 63 / 214 >

この作品をシェア

pagetop