門限9時の領収書
一定のリズムを保つ時計の針が気になる、きっと後一時間もすれば彼女からメールが入るはずだ。
「でー……、さ。長男からお願い、が。ありまして。土曜日さー弟くん良平くんをー連れて出かけてほしんですけど?」
弟の良平はお客さんが来たらテンションが上がって、
それだけなら子供だからと我慢できるが、
洋平の部屋に入り浸り友人の膝に乗ってひたすら邪魔をするから、
(ゲームに参加したりお菓子を食い漁ったり)、
彼女が訪ねてきたら酷いことになりそうだと伝えた。
『、何時に来るの』
ちらりと母親を見ると、先程よりは柔らかな目に変化したように思う。
……良かった
刺々しいのは過去の自分に対してで、今の恋愛を否定する気はないらしい。
なんだかんだで結衣の存在をたくさんの人に自慢したい。
だから友好的な母親の態度が洋平には嬉しく思えた。
十一時くらいに来て帰宅は六時半の電車だと告げると、
やや困ったように眉間に皺を刻み、母親は時間が潰せないと零す。
年頃の男女を密室に残すことが腑に落ちないのだろう、そう出ることは承知していた。
となれば高校生……――頭を使えば切り札がある。