門限9時の領収書
――そんなことを考えるなんて、自分はどれだけ甘ちゃんなんだろうか。
まだ十六歳。
好きなだけで結婚はできないと思うようになるのかもしれないのだ。
例えば出世に役立つかとか、経済力はどうかとか、価値観が一致するかとか、金銭感覚が合うか……利害関係を。
それでも、まだ手すら握ったことのない彼女とならば、
好きなだけで結婚したいと夢見るので、――洋平は甘ちゃん代表を誇りに思う。
母親と父親。両親が自分たちの頃はどんなだったのだろうか。
TV画面は相変わらず不思議なポーズをするヨガの先生が独占している。
手前にあるローテーブルには冷めきったコーヒーが置かれている。
貴重な睡眠時間を妨害するな――そうクレームを入れる隙もなく、
『約束できないならママンは土曜日二階の部屋を掃除機かけて拭き掃除をして窓を拭いてワックスをかけて回りますー決定』
なんて言う物分かりの良い母親。
年の功ってやつだろうか。
一筋縄ではいかないようで、渋々頷く洋平にしたり顔を見せるのは、さすがアラフォー。
敵わない。
とにかくせっかくの家デート。
誰にも邪魔をされたくない。
楽しい楽しい一日になればいい。
なんなら今から外に出て流れ星さんにお祈りをしたいくらいだ。
……。
しかし、不純な恋心には味方してくれないと決まっていることを知ってしまっている。
だから洋平は罪悪感から夜空を眺めることはしない。