門限9時の領収書
――例えば日曜日のファミリーレストラン、
ドリンクバーとポテトフライで粘る女子高生が半日だらだら語るくらい、
洋平は結衣となら生産性のない長話を永遠に繰り広げられる自信がある。
――それくらいベタ惚れ。
まだ門限の九時までには数時間もある。
忙しい学生にとっては、たった三十分のデートでも貴重なのだ。
だから電車を降りたなら、ファーストフード店なり公園なり、
とにかくどこかに居座り くだらないお喋りをしていたい。
趣味が雑談な洋平からすれば、彼女が好む(笑いのクオリティーは低い)小話を、
いくらでも披露できる引き出しはあるし。
いいや、それは建前。
薄暗いのだから、人目を気にせずキスをしたいのが本音。
三十分あるなら二十五分は余裕で口づけに時間を費やせる。(五分はムード作り)
――それでも門限ギリギリにならないよう、八時には帰宅するよう、最低でも八時半には帰すよう努力している。
理由は――……
「あまー、美味しー」
――可愛いから。
必要以上に可愛いから。
ボーリング場の脇に申し訳程度に併設されたゲーム機械。
百円で三回遊べる景品の飴を頬張る彼女が可愛いから。
最近は物騒で昼間でさえ危ない為、夜道を歩かせたくないから門限は守る。
なんせ性犯罪の愚か者や変質者、ひったくりや無差別殺人鬼だっている世の中、
どれも結衣の身に起こるなんて死んでも許せない――最低限、彼氏として出来ることはしたい。
(というか人様の娘に門限を破らせて、親を心配させることが平気な男でありたくないし、
また万が一事件に巻き込まれても、
深夜徘徊をした被害者にも非があると責められ、彼女や家族を悲しませたくないから)
努力で賄える範囲は“大人”でありたい――誠実な想いを証明できる部分は態度で示したい。
――なんて、ちょっとは保護者が安心する面を持ち合わせているのが洋平だったりする。