門限9時の領収書
さっきまでのぎこちなさは嘘のように、すらすらと放課後のノリで流れる会話は、
源泉みたいに止まることなく笑いを作り出す。
「若いノリ、青春じゃんか。ジーマイナー、ジーセブン、あはは」
「はは、イーマイナー。てかあの頃ってさ、今もか、なんか弾き語り流行るよな」
このような世代ネタは、会話を埋めたい時に非常に役立つと洋平は思っている。
同じ時代を生きてきたのだから、必然的に同じ事柄を見聞きしてきたので、
自然と感覚が似るのか、お題が尽きないから楽で、盛り上がり易い。
今現在の話よりも、思い出トークの方が比較的スムーズな会話になる理由は、
恐らく当時 普通だった感性が今になるとツッコミどころ満載で、
小話として起承転結付け整理した上で披露出来るからだろう。
また、頷く内容ではなくても、話題は知っているので情景を浮かべられるからだろう。
楽し、てか笑顔かわい
結衣の笑い顔が嬉しくて、洋平も一緒になって幸せを共有できることが楽しかった。
例えば恋愛。
訳アリ主人公、ヤンキー美談、恋人の死や病、ドラッグ、友人が豹変、Dv、淫らな性、家庭環境に陰……
当時は素直に感動したはずが、今になるとありえないネタになる不思議。
面白いと思う。成長したら価値観が変わるのだろう。
しかし、それは非常に悲しくもあるのだ。
感動することが減るばかりで、つまり素直な心をなくしてしまったような気がするから――……
無垢な時の単純な感情が羨ましく思う。
今更、昔のようにはなれないもどかしさ。
あの頃の夢は大人になった自分が作り出す世界だった。
けれども、歳を重ね大人と呼ばれる頃になると、
中学生の頃の幼さや、小学生の頃の清潔さに焦がれ、時間を戻せたらいいのにと夢見ることが夢になるらしい。
洋平が居る今の時間は、何十年後にどんな夢を見させるのだろうか。
いくつになっても明日を楽しみに眠られる人でありたい。
……と、中学卒業して一年で洋平が語れど全く重みはないのだけれど。