俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
車のドアが閉まるバタンという音とともに、爽やかな声が耳に舞いこんでくる。
「祈織お兄さん!あんな兄を送ってきてくださったんですか!?ありがとうございます!」
あたしはこちらに歩いてくる祈織お兄さんに丁重に頭を下げた。
あんなチャラ男な兄貴どこかで捨ててきていいのに、祈織お兄さんはホント優しいよなぁ。
「“あんな兄”なんて言ったら、彰がっかりしちゃうよ、実來ちゃん。」
「いいんですよ、あんなお調子者の兄は!」
祈織お兄さんは楽しげにくすくすと笑う。
「あっ、そうだ。神崎君、あのオーディション受けるんだってね。」
もう祈織お兄さんも知ってるんだ――。
「はい、そうですけど。」
ん?いつも以上にコイツ無愛想じゃない??
アイツを見ればいつもの偽笑顔すらない。