俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
近くて遠い存在
【祈織Side】
部屋にやさしい光が差し込む。
今日は久々のオフで、俺は自身のマンションのリビングでゆっくりと流れる時間を感じていた。
白い革のソファーに腰掛け、ブラックコーヒーをすするとカタンという音を響かせマグカップをガラスのテーブルに置く。
そして、眼鏡を押し上げて、次のドラマの台本に目を落とした。
……でも、なかなか頭に入らない。
嫌でも耳に入ってくるのは、少しずつオーディションに近づく時間を刻む秒針の音。
そう、あのオーディションはもう間近に迫っていた。
だから、何も手に付かないんだ……。