俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
何度目のコールだろう?
まだそんなに鳴ってないのかもしれないけど、すごく長く感じる……。
そんな感情ばかりが押しよせるなか、急に機械音が愛おしい声にかわった。
「……はい、もしもし。……どうしたんですか……祈織お兄さん……?」
でも、嬉しくなったのも束の間で、聞いたこともない実來ちゃんのぎこちない喋り方が胸を突き刺す。
あんなことの後だから、こうなって当たり前だよな……。
でも、わかっていてもさみしいな……。
「あ、いや、ちょっと話したいことがあるんだ。今から会えないかな?今どこにいるの?」
俺は見えないのに笑みを作りながら、実來ちゃんの知っている俺を演じようとする。
ただ勇気がないだけなんだけど……。
少しに沈黙の後に実來ちゃんの声がまた聞こえてきた。
「……駅前のマックにいますけど……。」
「じゃあ、今から行くね。」
俺はそのまま電話を切った。
ちゃんと想いを伝えよう。
想いなら神崎君には負けないはずだ――。