俺様アイドルとオタク女のキケンな関係


何度目のコールだろう?


まだそんなに鳴ってないのかもしれないけど、すごく長く感じる……。


そんな感情ばかりが押しよせるなか、急に機械音が愛おしい声にかわった。


「……はい、もしもし。……どうしたんですか……祈織お兄さん……?」


でも、嬉しくなったのも束の間で、聞いたこともない実來ちゃんのぎこちない喋り方が胸を突き刺す。


あんなことの後だから、こうなって当たり前だよな……。

でも、わかっていてもさみしいな……。


「あ、いや、ちょっと話したいことがあるんだ。今から会えないかな?今どこにいるの?」


俺は見えないのに笑みを作りながら、実來ちゃんの知っている俺を演じようとする。

ただ勇気がないだけなんだけど……。


少しに沈黙の後に実來ちゃんの声がまた聞こえてきた。


「……駅前のマックにいますけど……。」

「じゃあ、今から行くね。」


俺はそのまま電話を切った。


ちゃんと想いを伝えよう。


想いなら神崎君には負けないはずだ――。



< 234 / 348 >

この作品をシェア

pagetop