俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
運転していると、店の前に立つカーキ色のモッズコートにムートンブーツをはいた実來ちゃんの姿がすぐに目に映った。
隣にいつものお友達がいるみたいだけど、やっぱり何よりも誰よりも先に目に映るのは実來ちゃんだ。
一体いつからこんなふうになったんだろうな、俺は――。
つい苦笑いをもらしながら、実來ちゃん達の前に車をとめ、ハンチングをかぶって車から降りた。
「ごめんね、急に。お友達も一緒だったのに。」
俺はいつもみたいに笑って言うけど、実來ちゃんは笑顔すら浮かべてくれない。
「祈織さん、また会えて嬉しいです!ご一緒していいですか?」
すると、実來ちゃんの友達の玲ちゃんがニコニコと話しかけてきてくれた。
また実來ちゃんのこんな笑顔が見たいのに……。
「あぁ、ごめんね。今日は実來ちゃんと話したいことがあって……。」
玲ちゃんがしゅんとすると、絵麻ちゃんが俺の目を見た後、実來ちゃんを見てこう言った。
「実來ちゃん、私達は大丈夫だから行ってきて。」
「……あ、うん。」
こくりと頷いてくれた実來ちゃんを乗せて、俺は車を出した。