俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
開かれた玄関の戸から漏れる光。
肩幅の広い影が現れる。
段々と近付くその存在にあたしは息をのんだ。
角ばった顔に、印象的な眉間にほられた皺。
見るからにアイツが話してたイメージそのものの人だ。
アイツのお父さんに違いない。
それを確認すると、あたしはアイツの前に立っていた体をひきブロック塀の陰に隠れた。
ここからはアイツの問題だから――。
今あたしにはアイツのお父さんの顔は見えず、アイツの顔だけが見えていた。
アイツは俯きながらカツラをスルリとはずす。
あたりはもう薄暗いけど、鬱陶しいカツラがはずされ浮かび上がったその表情は、とてもアイツのものとは思えなかった。
いつものあたしに向ける余裕そうな笑みはどこにもなくて、すごく緊張したようなかたい表情。
アイツにとってお父さんがどんな存在なのか伝わってくる……。