俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
「……太郎。」
闇に消え入りそうな僅かな低い声。
顔も見えないし、その短い声だけじゃ、うまく心が読みとれない。
アイツも一言も発さないし、見てるこっちがハラハラするよ……。
第3者で何の関係もないあたしはただブロック塀の陰で邪魔をしないよう縮こまっていた。
すると、もう一度アイツのお父さんの口から声が紡がれたんだ。
「……ちゃんと……学校には行ってるのか?」
あたしの耳に届いたのは重々しい言葉。
でも、でもさぁ、怒ってた父親が最初にこの言葉をかける?
「……あぁ、なるべく行くようにしてる……。」
アイツはお父さんと決して合っていないであろう視線のまま、かすれた声で言葉少なにそう言った。
腹決めてきたとかいう割に、この短い会話はなんなのよ……?