俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
緊張の糸が一気に切れて、つい頬が緩む。
アイツはあんなふうに言ってたけど、心配してただけなんじゃん――。
確かに頑固そうではあるけど、いいお父さんだなってそう思った。
意外とこの親子似た者同士じゃん。
アイツあんなマジな顔してさ――。
人のことだけど、ちょっと嬉しいかも。
そうしてあたしがアイツのそばに行くと、女の人の声がした。
「太郎久しぶりね。」
穏やかな優しい声。
緩やかなパーマのかかったセミロングの髪に、藤色のエプロンをつけた人が近づいてきて上品ににこりと笑う。
「……母さん――。」
アイツのほっとしたような声が夜の闇に響いた。