俺様アイドルとオタク女のキケンな関係


緊張の糸が一気に切れて、つい頬が緩む。


アイツはあんなふうに言ってたけど、心配してただけなんじゃん――。


確かに頑固そうではあるけど、いいお父さんだなってそう思った。


意外とこの親子似た者同士じゃん。


アイツあんなマジな顔してさ――。


人のことだけど、ちょっと嬉しいかも。


そうしてあたしがアイツのそばに行くと、女の人の声がした。


「太郎久しぶりね。」


穏やかな優しい声。


緩やかなパーマのかかったセミロングの髪に、藤色のエプロンをつけた人が近づいてきて上品ににこりと笑う。


「……母さん――。」


アイツのほっとしたような声が夜の闇に響いた。



< 278 / 348 >

この作品をシェア

pagetop