俺様アイドルとオタク女のキケンな関係


そして、アイツは、あたしのよく知る俺様な笑顔にかわっていく。


「本当の俺は、愛想笑いなんか大嫌いで、意思もなくへらへら笑うなんてしたくもない。」


一気に口調までいつものアイツに戻っていくと、周りは一瞬ざわめきの海になる。


でも、驚きのあまりか、また妙にしんとした。


「上下関係とかめんどーだし、それに、実力こそがすべてだと思ってる。いつもニコニコしてるアイドルなんて、俺らしくない。」


アイツは本当の自分を淡々と語っていくと、迷いのない真っ直ぐな声でこう告げた。


「――だから、みんなが知ってる神崎拓真は、本当の俺じゃない。ニセモノの俺なんです――。」


アイツ――、あんなこと言って、――自分だけすっきりした顔しちゃって。


不安なんか消えないけど、アイツの大した度胸に小さく笑う。


本当に……突拍子もないことするんだから。


いつもいつも疲れるよ。


――でも、今の神崎拓真は、ううん、山田太郎はライトなんかなくたって輝いてるよ。


三次元男嫌いのあたしなのに、今はステージの上に立った山田太郎に釘付け。


認めたくないけど、かっこいいよ――。



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