俺様アイドルとオタク女のキケンな関係
胸は嫌というほどの不安と恐怖で溢れかえってる。
あたしは震える手で必死に祈った――。
「どんな拓真君も好きだよー!!」
「もちろん応援するって!」
「大好きー拓真君ー!!」
――え……?
あちらこちらからあがった声が、大歓声へと変わっていく。
あたしは状況が飲み込めないまま、へなへなと力が抜けて、周りを見渡した。
ファンの女の子たちは、アイツから放たれた光を受けたようにキラキラした笑顔をしてる。
会場の屋根を突き抜けてしまいそうな歓声は、
――アイツを応援してるんだ――。
認めてくれたんだ――。
「……ありがとう、みんな――!!」
大歓声の中響き渡るアイツの絞り出したような声。
あたしの位置からは遠いのに、アイツの姿が大きく見える。
煌めくアイツがにじんで見えて、あたしはハンチングのつばをギュッと下げた。
すごいね、アイツは――。
これだけの人の心を掴んで……。
あたしはいつも振り回されっぱなしだよ。
――まあ、リアルの世界も捨てたもんじゃないかもしれないね――。