恋屑(コイクズ)-短編集-
No.14
黒い車
好き、だなんて簡単に認められないの。別に強がっているわけではない。
ただ彼からしてみれば私はただの高校生のお友達ってだけ。
そりゃそうだよ。
私と彼は一回り以上歳が離れているわけで。
考えたくないけどつまり私が生まれる前に彼はもう小学校を卒業してるんだよ。
こんなに歳が離れているのだから彼からしてみれば私の発言も行動も全て子供に見える。
それが嫌で。少しでも彼に一人の女性として私を見てほしくて。
彼はよく放課後、黒い車に乗って私を迎えに来てくれる。
最初はドキドキして、嬉しかったけど学校帰りな私は制服を着ていて素っぴんで。
彼は仕事の合間に来てくれたからスーツを着ていて。
なんだか余計に彼との距離を感じて勝手に落ち込んでしまうからもう迎えに来ないでねって言ってしまった。
それでも彼はあの黒い車に乗って制服に匂いがつくからやめてと私が頼んでもやめてくれないタバコを吸いながら校門から少し離れたところで私を待っていてくれる。
彼はやっぱり私より年齢の分大人で経済的にも雰囲気にも余裕があって。
私は彼が迎えに来てくれるだけで、彼が笑ってくれるだけで、それだけで嬉しくて楽しくて。
彼が目を細めて笑う顔を見ると心がきゅんとなる。きゅんとなって、ああ、彼のこと好きになりそうだなって。
でも好きにならないように自分の心に蓋をしてついでに絶対に開かないように鍵もかけて。
だって彼にとって私は恋愛対象にはなりえないのだから。
勘違いしてつらい思いなんてそんなこと絶対にしたくない。
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