恋屑(コイクズ)-短編集-

「ね?だから映画見るのやめてこれ着て?」





「嫌です。もうコスプレはしないって言ったじゃん。」





私が冷たく言い返すとびっくりした顔をする。当たり前だよ、何今さらびっくりしてんの?





「なんで?だってセーラー服もナースも着たのに王道のメイド服を着てないなんてもったいないよ!」





「全然何にももったいなくありません。もう約束したでしょ?」





「だって…ななちゃんに着てほしくて買ったのに…。」




わざとらしいくらいに落ち込んでみせてるけどもう着ません!





そう思っているのに捨てられた子犬みたいな目でこっちを見られると心が折れそうになる。





うぅ、また負けそう…





で、最初のやり取りに戻るわけなのですよ。





「ななちゃんお願い!ただメイド服着たななちゃんの写真とって待ち受けにしてななちゃんに会えなくて寂しいときに見るだけだから!ね?」





「それが嫌だって言ってるんでしょ?恥ずかしいし嫌です。」





私に否定されるたびにすごく傷ついた顔をするからもう彼の顔を見て話せない。




もう今日こそは負けないんだからね!





「恥ずかしくなんかないよ!ななちゃんは自分のかわいさがわかってないの!確かにななちゃんは何着てもかわいいけど…」





どこに彼の怒るポイントがあるのかいまだによくわからないけど、





とりあえず彼の心に火をつける発言をしてしまったらしく、私の魅力について今度は熱く語り始めた。





あー、もう!





「わかったから!もう、着ればいいんでしょ?その代わり…って、うわっ!」





私が話してる最中にものすごい勢いで抱きついてきた彼。危ないなあ、もう。しかもまだ話してるからね!





「ありがとうななちゃん!ななちゃんは女神だよ!あ、じゃあ今度は天使のコスプレとか…」





「しません!一生しません!」






【残念彼氏】






結局また彼に負けて着てしまう私。でも好きなんて私も残念?






-END-
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