甘い狂気
春紀はいつも他の女を抱く。
今日もほら──
「春紀」
私が春紀の名前を呼ぶと、春紀は嬉しそうに笑った。
泣いている女に跨がる春紀。女の口許には春紀の綺麗な手が添えられていた。
あの手は私だけのものなのに…
何て思っていたら春紀は女の口許から手を離した。途端、喚きだす女。
「助けて!ねぇお願いだから!!ねぇ!」
助けて?何言ってるのこいつ。馬鹿じゃないの。
「ふざけた事言わないでよ。あんたが春紀をたぶらかしたんでしょ?それなのに助けてだなんて…」
笑わせないでよ。
そう言って、私は持っていたナイフで女の首を刺した。女の血のせいで春紀と私は血塗れ。
「汚いな…」
「あははっ。仕方ないよ」
そう言って笑う春紀…人の気も知らないで…
「だいたい春紀が浮気しなければ良いんじゃない」
「違うよ!これはね、由希が俺をちゃんと愛してるか確認する為の行為。浮気なんてとんでもない…全部愛故だよ。それに血塗れになるのが嫌なら刺さなきゃ良いんじゃないの?」
そんな事言われたら何も言えないじゃない。惚れた方が負けって事ね。
「そう…なら仕方ないわね。私も愛故よ」
お互いを見合ってクスリと笑い合う。あぁ、やっぱり春紀が好き。
後書き