ジュリアン・ドール
定期的に行われる街の巡回。


ローレンが帰り道に通る森の小道の側――。

城からはそれほど離れていない場所に、ひっそりとある小さな木の小屋に、娘は老夫婦と住んでいた。

もちろん、私はそれを知っていたし、私はよく彼女に会いにそこに通ってもいた。


その娘、姿をくらましたはずのジュリアンは、毎日その時間になるとローレンを一目見ようと、その小道の木陰に身を潜めて待っていた。

そして、ある日のこと、ついに運命は再びローレンとジュリアンを引き合わせた。


『そろそろ、あの人がここを通る時間』

ジュリアンは、嬉しそうに部屋を飛び出した。

『ジュリアン、決してローレンの前に姿を現してはいけないよ』

『わかってるわ・・・・・』

私は、可愛そうなジュリアンに、ローレンは重い記憶喪失で、脳に負担をかけると即死してしまう恐れがある。と、言い聞かせていた。

ジュリアンは、素直に私の言う事を信じ、彼の身を案じ、決して彼に姿を見せようとはしなかった。ただ、毎日通るこの道で、彼が通り過ぎていくのを見守っているのが唯一の生きがいのように生きていた。


そう、ローレンにとって生きがいだった、彼の命の全てを占めていたジュリアンが突然目の前に現れたら、彼は大きなショックを受けるだろう。と、そう、私が言い聞かせたから。

ジュリアンは、いつもそこで彼が来るのを待っていた。

風が強い日も、雨の日も、いつも・・・・・。



その日は、二人が再会するのを知っていたように、降り続いていた長雨も止み、神は天を眩しい限りの黄昏の色に染めていた。


『この奥にございます』

『こんなに城に近いところに・・・・・、もしかしてこの辺で薪割りをしていると言う事は・・・・・?』


聞き慣れた老人と、懐かしい声の会話が聞こえてくる。


ジュリアンは、いつもの身体が隠れる程の太い樹の陰に隠れて、そっと覗いた。


すると、いつも彼のそばにつている付き人は、誰一人もいない代わりに、彼の乗る馬の後ろには・・・・・。

『おじいちゃん・・・・・!』

(ど、どういう事?おじいちゃん・・・・・)



ジュリアンは、老人とローレンの会話に耳を澄ました。


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