ジュリアン・ドール
『私の邪魔はしないで、お兄様!私の気持ち解ってくれるでしょう?

だって、あの娘は私の欲しいものを全部奪ってしまうの。


あの娘は綺麗でみんなに愛されて、お父様がいつも気にかけているのもあの娘、お兄様だってベルシナにいる間、ずっとあの娘を可愛がっていたくせに。

私がやっと好きな人が出来たと思ったら、その人までがあの娘を愛してるなんて、神様は私から何もかも取り上げてしまう。


幸せは自分の手でつかむものよ!だから私は私のやり方であの人と幸せになるの。


私には、一番憎いあの娘を殺す事も出来るのよ。でも、私だって、そこまで愚かではないわ。ただ、初めからあの娘とローレンが知り合っていなかった事にするだけよ。そして彼に、私だけを愛してくれるようにする、それだけ。


邪魔をしないで、二度と彼の前にあの娘を引き合わせようなんて思ったなら、彼があの娘のことを思い出そうとするなら、私、あの娘を消すわ。この世に生まれて来なかったように。そうすれば、誰もあの娘を初めから知ることもないのだから。


その時には、私たち家族の思い出がきっと暖かいものに新しく塗り替えられるのかしら?

私としては、その方が幸せかも。そして、お兄様も今頃は堂々とお父様の後を継いで、この国の王になっているだろうし』


『エルミラーラ、馬鹿な考えはよせ!歴史を塗り替えるなんて、恐ろしい事を考えるな』

『解っているわよそれくらい。だから、そうさせないように努力してね、お兄様。それに、ローレンには死んでほしくないもの。だから私一人でいいのよ。彼の愛する人は!』


翌日エルミラーラは、ローレンにマインドコントロールを施し、ジュリアン宛ての手紙を書かせ、そして、彼の中から、ジュリアンに関する全ての記憶が消された。


そして、ローレンにはエルミラーラによって禁じられた魔術、愛の呪縛がかけられた。
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