ジュリアン・ドール
「だって、ハーリーは急にこんなに変わってしまうし、もしかしたら、ローレンまで変わり果ててしまっているのでは・・・・・って、不安なのよ。

私、ずっと眠っていたのかしら?だとしたら、どれくらい眠っていたのかしら?とても不安なのよ。

そう思うと、ローレンにもう長い間会っていないような気がして、とても寂しいわ」


ジュリアンは、その大きな眸に半分涙を浮かべていた。


目覚めて、初めて会った身内が、もう姿も中年じみた自分の義兄の姿だったのだから、不安な気持ちは痛いほどわかる。しかし・・・・・ハーリーはどうすれば良いのか、まだ答は出ていない。



「ジュリアン・・・・・お願いだ。私を困らせないでおくれ・・・」

「ハーリー・・・、言いたい事は分かってるわ。こんな足ではダンスも踊れやしないもの。それにこんなお顔じゃ……ローレンに恥をかかせてしまうもの、ここでおとなしくしてる」



ジュリアンは、素直に諦めてはいたが、もし、その足に傷を負っていなければ、断る理由がない。


彼女の傷が治ってしまった時には、あの場所へ連れて行かなければならなくなるだろう。その時には、あの青年ジョウとエルミラーラの生まれ変わりのミサが、二人寄り添っているのを見て、私は何と説明すれば良いのだろうか?


ハーリーは、ふと、そんな悩みを頭に過らせたが、何も知らぬ澄んだ眸のジュリアンを思うと、今は唯、優しく返事を返すことしかできなかった。



「そう、はやく・・・、足治さないと連れていかないぞ?」

「うん・・・・・」


 ジュリアンは、素直に頷いた。


(連れていく?どこへ・・・・・?わたしは何を言っているのだ!そんなこと出来る訳ないだろう)


 ハーリーは、心の中で自分自身に抗議をしていた。



「ハーリー」

「んー、何?」


ハーリーは、ジュリアンの視線を感じて再びジュリアンへ振り向いた。



「お髭、無い方がいいのに・・・・・」



ジュリアンは、ハーリーの様子に気を使ってか、全く話題をそらし、平気なフリをしていた。






< 112 / 155 >

この作品をシェア

pagetop