ジュリアン・ドール
ハーリーは珍しく笑顔を見せるジョウをみて、「何か、面白い事でもあったのですか?」と、興味を持って訪ねてみたが、ジョウは再び無口に黙り込んでしまう。



「ごめんなさいねハーリー。ジョウは人と話すのが苦手なのよ。

さっきね、貴方が階段を駆け降りてきた時、フレアーが、『館内を駆けるなんて行儀が悪い』って言っていたくせに、慌てて走って帰るものだから、可笑しくなったのよ。ね、ジョウ?」


ミサは、なんとか三人で会話を楽しもうと、一生懸命に話しているのがジョウにも分かり、ジョウは仕方なく、ぶっきらぼうな返事を返した。



「・・・・・ああ」



ミサは、ジョウの考えている事なら何でも理解できるようだ。それ程に二人は、本当に自然に、そして深く愛し合っているのか?


ハーリーは、まるで観察するように二人をじっと見つめていた。



「そうだったのですか・・・・・それは可笑しいですね」



ハーリーは会話に気を配りながら、目の前でシェーカーを振っている。


グラスには幾つかの氷と、ベースであるシロップと、そしてもう片方にはベースの果汁のリキュールを注ぎ、シロップの後に黒ビールを、リキュール後にはソーダを、それぞれ注ぎ込んだ。


ハーリーは、脇にあるマドラーをクルクルと指先で遊ぶように取り出し、ストンとグラスに立てて、ゆっくりと掻き混ぜた。


二つのカクテルグラスに注がれた酒が、マドラーに掻き混ぜられて、氷の涼やかな音を立てている。そして、再び指先でくるくるとマドラーを回し、元の位置にそれを治める。ちょっとした業の見せ場だ。



「ハーリー、格好いい!」



ミサは、そんな姿を見て、思わずそれに魅入っていた。
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