ジュリアン・ドール
「だめよ!ハーリー、私はもう決めたの。貴方とは出会ったばかりでも、私、昨日始めて会った気がしないの。・・・・・きっと、貴方の言う“前世”で、私はとても貴方のことを慕っていたんだわ。そんな好感が持てるんだもの。
貴方にも私たちを祝福してもらわなきゃ、ね?! 時を越えて出会った友人のために!」
「・・・・・」
「ねぇ、良かったら、是非今聴かせてよ!お父様も、ハーリーのピアノが是非聞きたいって言っていたわ」
ミサはカウンターに身を乗り出す始末。
「し、しかし・・・・・」
ハーリーは、困惑の表情で返事を濁していた。
「ねえ、ジョウからもお願いして。私、ハーリーのピアノが聴いてみたいの」
ミサは、ジョウの袖を掴み、揺さぶっている。こういう時の、甘えた声で我が儘を通そうとするミサには、ジョウはどうも弱いらしく、言われたままにジョウは無口な筈の口を開いた。
「こう、言い出すと絶対にきかないんだよ。悪いけど、お願いできませんか?」
ハーリーは、しばらく考えていた。遥か昔の事を思い出し・・・・・。
前世のハーリーの父、元ダルターニ王国国王エルストン二十一世は、大の音楽好きで、ハーリーは幼い頃からピアノを習わされていた。
父親に愛されていないと思いこんでいたハーリーは、それでもなんとか父親に喜んでもらおうという一心で、毎日ピアノの稽古に励んでいた。
彼がピアノを辞めたのは、自分には腹違いの義妹がいて、エルストン二十一世はその姫君を、側にいるハーリーや妹のエルミラーラよりも深く愛していたから。
ダルターニの離宮から、定期的にその娘の状況報告に来る、もともとは彼の家庭教師だった王の側近シュレイツの話を偶然立ち聞きしてしまったある日、その姫君もピアノを習い始めた、という事実を知らされたハーリーは、なんとか、その顔も知らないような姫君に負けないようにと、これまで以上に必死な稽古を重ねたが……、そんな彼の思いは届かず、王はいつも、三日に一度、娘の報告に来るシュレイツが来るのを楽しみに待っていた。
幼い頃から兄のように慣れ親しんで来たシュレイツさえ、もう、彼の事を見てくれようとはしない。
貴方にも私たちを祝福してもらわなきゃ、ね?! 時を越えて出会った友人のために!」
「・・・・・」
「ねぇ、良かったら、是非今聴かせてよ!お父様も、ハーリーのピアノが是非聞きたいって言っていたわ」
ミサはカウンターに身を乗り出す始末。
「し、しかし・・・・・」
ハーリーは、困惑の表情で返事を濁していた。
「ねえ、ジョウからもお願いして。私、ハーリーのピアノが聴いてみたいの」
ミサは、ジョウの袖を掴み、揺さぶっている。こういう時の、甘えた声で我が儘を通そうとするミサには、ジョウはどうも弱いらしく、言われたままにジョウは無口な筈の口を開いた。
「こう、言い出すと絶対にきかないんだよ。悪いけど、お願いできませんか?」
ハーリーは、しばらく考えていた。遥か昔の事を思い出し・・・・・。
前世のハーリーの父、元ダルターニ王国国王エルストン二十一世は、大の音楽好きで、ハーリーは幼い頃からピアノを習わされていた。
父親に愛されていないと思いこんでいたハーリーは、それでもなんとか父親に喜んでもらおうという一心で、毎日ピアノの稽古に励んでいた。
彼がピアノを辞めたのは、自分には腹違いの義妹がいて、エルストン二十一世はその姫君を、側にいるハーリーや妹のエルミラーラよりも深く愛していたから。
ダルターニの離宮から、定期的にその娘の状況報告に来る、もともとは彼の家庭教師だった王の側近シュレイツの話を偶然立ち聞きしてしまったある日、その姫君もピアノを習い始めた、という事実を知らされたハーリーは、なんとか、その顔も知らないような姫君に負けないようにと、これまで以上に必死な稽古を重ねたが……、そんな彼の思いは届かず、王はいつも、三日に一度、娘の報告に来るシュレイツが来るのを楽しみに待っていた。
幼い頃から兄のように慣れ親しんで来たシュレイツさえ、もう、彼の事を見てくれようとはしない。