ジュリアン・ドール
『・・・これ・・・ ら・・・・・・どうだ?』
(ハーリーが俺に話しかける。何故か俺はこいつを嫌ってはいない)
『・・・・・・れは?』
(それは、ウォルビアじゃないか)
『ジュリアンの眸の色のカクテル“ウォルビア”私の新作だ』
『まあ、素敵!とっても美味しそうよローレン!』
ジョウは、ここでは“ローレン”と呼ばれていた。
彼の傍らで、それを聞いて喜ぶ、空気の様に澄んだ声で喜ぶ娘。ジョウは、その傍らに振り向き、ドキリと驚いた。
心臓が飛び出す思いだった。
隣には、漆黒の髪の自分の、いつも自分の隣にいるはずの最愛のパートナーのミサではなく、日頃胸に思い描き続けていた娘、黄金色の綿のような柔らかい髪、光りに溶けそうなほどの白い肌の娘。
小さな顔の中にサンディゴルの宝石と見まごう、深い藍色の輝きを秘めた眸。
人間の姿の“ジュリアン”だった。
ジョウは、胸の中が熱くなる胸を押さえずにはいられなかった。
(本当に奇跡が起こったのか?俺はあの古い人形店の柱時計のオルゴールが響く度、いつも、いつも、君が人間の姿になって踊り出すのを想像していたんだ。
踊る君をリードしていたのは、踊りの苦手なはずのこの俺だなんて馬鹿げてたけど・・・・・・、君は・・・本当に人間になったんだね)
しかし、ジョウの中にもう一人の知らない自分がいるように、ジョウは勝手にその娘と会話をしている。
『そうだね、本当だ!君の眸と同じ色だ』
そして差し出されたウォルビアを、ほんの少し、嘗めるように口に含んでみると、甘くて微かに酸っぱいような、果実酒らしい味が口に広がる。
アルコールは比較的少なめにしてもらったはずなのに、ほんの少し口に含んだだけで、既にクラッ・・・・・・と、酒に酔い始めている。しかし、気持ちの悪い酔いではない。
(酒に酔うっていうのはこんな気持ちか)と、まるで今初めて酒がのめる様になったような感覚に陥っていた。