ジュリアン・ドール
ローレンの誘いに応じ、ジュリアンは彼の手を受け取り、ダンスフロアーへと歩いてくる。そして、白いグランドピアノの席は空けられ、ハーリーが専属の演奏者に変わって、席に着くと、鍵盤の上にそっと手を置き体を揺らしはじめ、麗しくも清らかなる曲の旋律がこの広い空間に響き渡り、二人に魔法をかける。

誰をも引きつける魅力の魔法。



（これは、この曲は･････さっきハーリーが弾いていた、彼のオリジナル曲だ）



ローレンの中にいるジョウが、曲を聴いて思い出すが、ローレンとジュリアンにとっては、その曲は初めて聞く曲だった。



『いい曲だ、ハーリー。これは、曲の名前はなんと言う名だ？』



ローレンが、ピアノを弾いているハーリーに向かって叫んだ。



『曲の名は、“ジュリアン＝クライン”』


ハーリーが質問に答え、曲のタイトルを告げた。


曲のタイトルを聞いて、驚いた顔をしているジュリアン。



『“ジュリアン＝クライン”だって？　君の曲だよジュリアン！ああ、なんて素晴らしい曲なんだ！』



ローレンは、興奮せずにはいられないという様子で、喜びの余りジュリアンを抱き締めていた。




『踊ろう、ジュリアン！』



ローレンは、無償に踊りたくなる気持ちを抑え切れず、やや強引にジュリアンの手を引き、ジュリアンをフロアの中央へと連れて行った。　ジュリアンは、手を引かれるが儘にローレンについて行く。



この時、ローレンがダンスを踊るのは、二年ぶりのことだった。
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