ジュリアン・ドール
『ジョウ、私もよ・・・・。私が心から愛するのは、生涯で貴方一人だけ・・・』


そして二人は、冷たい夜風に吹かれながらも、身体中が暑くなるような熱い接吻けを交わした。


ジョウは今迄何度も非現実的な言い伝えの奇跡が本当に起こったように、自分の想像の中では、本当に動き出す人形の姿を思い描き続けていた。


言い伝えを信じている訳ではないが、大人でも夢を見るだけならばおかしくはない。想像の中だけで信じていられればそれでいい。そう、今迄思ってきたけれど・・・・・、でも、ミサの本当の気持ちを聞いてしまった日から今迄の事を思い出すと、ジョウはミサに今迄どんなに寂しい思いをさせてしまっていたのだろう?と、思い当たる節がいっぱいあった。


食事をしている時でさえ、まるでトリップでもしてしまっているかのように、急に黙り込んで考え事をしてしまった事もあった。


そんな時でも、ジョウの仕事に対しての情熱を、誰よりも理解してくれるミサは、考え事をしているジョウを、いつまでもそっとしておいてくれていた。


でもこれからは、せめてミサといる時だけはそれを忘れていよう。と、その時ジョウは心に決めた。そして、今回ベルシナに滞在するに当たっては、“その心がけとして、ベルシナにいる間は仕事の事は考えない”という、自分への課題を作っていたのだが・・・・・。


ふと、紙とペンを持っている自分に我に返って、そんな自分に少し呆れ、溜め息を一つこぼした。



「で、ミサがいなくなれば、すぐこれだ」



身体に染み込んでいる仕事の癖と言うのは中々治らない。それに、たったの数日店を空けただけで、店の事がどうも気になって仕方がない。


・・・・・・時が流れると言う事は、日常が変化していく事なのか?


無理やりでも、変えていかなければならない事があるのか?


でも、そうする事が二人にとって必要な事なのだろう。


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