ジュリアン・ドール
第一章 動き出す運命

1.プロポーズ

ダルダ・サヴァル地方――。

そこは、ベルシナから国境となるダルターニ西山脈を越え、その山麓にあり、ダルダに入って一番初めに通る小さな町の集まりー。


ベルシナから馬車で渡って来たとしても、そう遠くはない。


もともとダルダは海と山に囲まれた国で、北には高く険しい山々の連なるダルターニ北山脈と、西にはベルシナとダルダの国境となっている、ダルターニ西山脈があり、このダルターニ西山脈というのはさほど険しくもなく、ベルシナ湾に向かって突き出ているサヴァル半島へと続いている。

サヴァル半島を西と東に分けるとしたら、丁度その西側半分がダルターニ西山脈の一部で、東側半分がサヴァラと言う小さな町になっている。そのダルターニ西山脈が、ダルダの北西から南西にかけて連なるその途中、丁度サヴァル半島入口付近が、谷のように山と山との間隔が広く開いていて、それは国境を越えるには都合が良く、馬車道が敷かれている。


ダルターニ西山脈の国境を越え、ダルダへ渡り、その山麓地方(サヴァル地方)に入ると、馬車ならばダルダでは有名な人形店“ジュリアンドール”のあるサヴァラは、そう遠い場所ではない。



町の外れにあるレンガ造りの建築物。


この国が、かつてダルターニ王国と呼ばれていた頃からの、この古い建物は、城と言うには小さ過ぎて、古くひび割れた見かけで、粗末な建物という印象を与えるが、治安の良いこの国には珍しく門を構えている、という点を見てわかる通り、当時は身分の高い者が住んでいたことが判るし、ダルダの首都ウェルシュに残されている、ダルターニ城の城跡を見てもわかるように、あまりにもよく似通った造りをしているこの建物は、かつては、ダルターニの離宮だったという事も明らかだ。
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