ジュリアン・ドール
「ご苦労様、セバスチャン。この後はドルガン家へ帰って、カ-ルとポ-ルを休ませてあげて頂だい。今日は随分と疲れさせてしまったようだから、時間が来たら別の馬で迎えに来て。貴方も時間まで食事をとって、ゆっくりしてなさい」

「はい、お気遣いありがとうございますお嬢様。今宵は久々の御夕食会、心ゆく儘にお楽しみ下さいませ」

「ありがとう」


召し使いは再び深く頭を垂れると直様踵を返し、馬車の先頭席に乗り込み、手綱を取った。


ミサは馬車の先頭で足踏みをして出発の準備をしている青毛の双子馬へと歩み寄った。


双子馬は、ミサが傍に来た喜びを露骨に見せる様にブロロ・・・・・と、鼻息を荒だてている。


「ポ-ル、カ-ル、お疲れ様。帰ってお食事よ。帰ってゆっくりしていなさいね」


ミサは自分の大切にしている双子馬に、順番に、優しく馬の鼻を撫でてやりながら語りかけてやった。そして馬の前からさっと身を引くと、召し使いに頷いて合図をし、召し使いは馬を走らせた。


馬車を見送った後、二人を待っていたのは、黒服に、胸にリボンのタイをつけた若い青年だった。


――彼もまた、この辺りでは見慣れた栗色の、短く清潔そうに整えられた髪と茶色の双眸。サバドリア系の、さすがは高級指向のこの館のオーナーに“見た目重視”で雇われたであろう、ここの使用人らしい容姿端麗な青年だ。


――その彼が、豪奢な館の大きな門の扉の前で二人を迎える様に、こちらを見つめて立っている。


「さあ、ジョウ急いで!お父様が待ちくたびれてるわ!!」


ミサは強引にジョウの手を取ると、その扉の前で立っている青年の方へ走って行った。


ジョウは、手を引かれるまま、一緒に走らされる。


「いらっしゃいませ、ミサ様。ドルガン様がお待ちしております」


青年は二人に品の良い笑顔で声をかけ、二人を門の中へと誘導する。
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