ジュリアン・ドール
扉を開けたその遥か正面を見ると、向こう側が中二階になっていて、食事の席があるのが見える。


ミサは、目でサロンを捜した。


「あ、お父様・・・・・!ジョウ、あそこよ。」


ミサは、その中にサロンを見つけると、急いで目の前に見える階段を駆けて行った。



大理石で造られたその階段には、靴音がうるさく響かないように、カ-テンと同じ色の絨毯が敷かれている。


サロンは、ダンスフロアを見下ろした時、一番見渡しの良い席に座って、二人を待っていた。


ミサの後から階段をゆっくり上ってくるジョウを、サロンは見つめていた。


「ジョウ、早く!ここよ!」


声のする方を見ると、ミサは既にサロンのいる予約席に着き、二人がその席からこちらを見ている。


ようやく長い階段を上り終え、ジョウがテ-ブル席に着き、予約の人数もそろったところで“舞踏会”での食事会が始まった。


「今日は遅くなってしまって誠に申し訳ありません、ドルガン様」


ジョウは、サロンに頭を下げた。


サロンは気にする様子も見せず、いつもの紳士的な態度で、余裕のある笑顔をジョウに向けていた。


「まだ遅い時間ではあるまい、夜はまだこれからだからな。まぁ、久し振りに会ったのだから、ゆっくりして行ってくれ」

「ありがとうございます」


そして・・・・・、その大きな円卓には次々に彼の目を驚かせるような、素晴らしく豪華な料理が運ばれて、“舞踏会”自慢の、超一流の料理で贅沢な夕食会が行われた。


「いやだわ・・・・・お父様」


ミサが行儀悪く料理を口に含ませたまま、困惑の表情で何かを言い出した。


「ん~?どうした?ミサ・・・・・」

「私の好きなお料理ばかり・・・・・困るじゃない、どうしてくれるのよ」

「・・・・・なぜ?」


 突然のミサの訳の解らぬ発言に、サロンは尋ねた。


「だって、私太っちゃう・・・・・」
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