ジュリアン・ドール
「お父様……」


ミサはジョウへと向けられたサロンの視線を、自分へと取り戻した。


「お父様は私にとって、とても大切な存在で、私、お父様を愛しているわ。

私が生まれてすぐに亡くなってしまったお母様の事など考えた事もない程、ずっとお父様が大好きだったもの。

お父様は、私の我が儘を、どんな事だって聞いてくれて可愛がってくれたし、ずっと私を守ってくれたかけがえのない人よ。

……でも、これからは、お父様の分も、ジョウが私の事を守ってくれるわ。

でもね、……お父様は彼の代わりにはならないのよ」


 ミサは必死で訴えていた。


「わかっているよ、ミサ。……だからだ。

あの人形はおまえの昔からの望みだ。たったそれ位の望みなら、彼はきっと答えてくれるさ、私の代わりに……。

君を手に入れる為とならばね……。と、私は信じている。……そうだろう?ジョウ君?」


サロンは再び微笑をその貌に浮かべ、ジョウを見ていた。


ジョウは返事に困っていた。ミサが望んでいる“プリンセス”という人形には、古い言い伝えがあったからー。
< 31 / 155 >

この作品をシェア

pagetop