ジュリアン・ドール
それは遊び心で詠った唯の偶詠に過ぎなかったが、高く澄んだ清らかな声は、静かな闇に遍く響きわたり、目の前に整然と並ぶ山々に跳ね返り、すぐに谺となって戻ってきて、美しい二つの声の輪唱が、まだ目を覚まさぬ花を次々と開かせていた。


 ソ-プリリアよ、私の心。

(ソ-プリリアよ、私の心)

 抱える程の、花束にして・・・・・

(抱える程の、花束にして・・・・・)

 ソ-プリリアを、貴方にあげる。

(ソ-プリリアを、貴方にあげる)


 受け止めて、さあ、その腕の中。

(受け止めて、さあ、その腕の中)


 ソ-プリリアを、私の心。

(ソ-プリリアを、私の心)


 抱き締めて今、私の心・・・・・。

(抱き締めて今、私の心・・・・・)


その輪唱のように響き渡っている自分の美しい歌声に、娘は絶頂感を覚えていた。


花を摘み終えると、娘は自分の頭の上で結わえられていた大きなリボンを解き、娘の月の光を讚えた黄金色の髪は、はらりと肩に舞い落ちる。


そして、ほどいたリボンは、摘んだ花を纏める為に利用され、娘が器用に花の茎をそれでぐるぐる巻きにした後、形よくリボンを結ぶと、花は娘の詠の通り“抱えるほどの花束”になった。
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