ジュリアン・ドール
それから・・・・・

骨董品とは言い難いガラクタは、彼が暇を見つけては、根気よく磨き上げ、従来の輝きを取り戻してから宝石類等を飾るガラスケースの並びにディスプレイされるのだった。



ガラクタの正体は見事な銀皿になったり、燭台になったり・・・・・。
そんなことも珍しくない。


さすが七百年程前に滅んだと言えど、代々、かつてのダルターニ王国の王家の血筋を受け継いできたこの家系に残された骨董品は、滅多なことでは手に入らぬような、高価な代物が多く保管されていたのだった。

勿論それらは全てやるべき仕事の合間を見計らってやっていた。



彼の“やるべき仕事”とは・・・・・

言わずと知れた事。

勿論、新しい人形を作り、店内に並べるること。



今では彼も人形師として燐国ベルシナにまで名の知れ渡る、一人前の人形師となっていた。


もう十年も前に他界してしまった彼の父も、ダルディに続き名をあげていた人形師だったが、その才能はしっかりと彼に受け継がれていた。


この家に生まれた血筋なのか、彼も人形を作る腕前は実に見事なもので、亡き父さえも上回る程に完成度が高いとも言われ、評判を呼んでいた。



多才な才能を発揮する生真面目なジョウ=クリストだが、生真面目というよりかは、己の目的に対して異常なる情熱を傾ける情熱家であった。


そんな彼の情熱をよく知っていて理解しているのは、彼のたった一人の肉親ダルディと、最愛の恋人のミサだけだろう。


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