ジュリアン・ドール

バーテンダーはミサの質問に対し、微笑みで返し「はい、そうでございます、マドモアゼル。ご注文はお決まりですか？なんなりとお言いつけ下さいませ。」と、言葉を返した。


「ありがとう。そうね、私はモカスニックと･････」と、ミサは、明るい笑顔で返事を返し、注文を傍らにいるジョウに振る。

「･････じゃあ、俺は･･･ウォルビアでも頂こうかな」

「ウォルヴィアとモカスニックですね。かしこまりました」



ミサがクスクス笑う。


（なんだよ）

（ウォルビアでも･･･じゃなく、ウォルビアしか呑めないくせに）

（煩いな、もう）


二人は、声は出さずとも、目と目でそんな会話をしていた。



ハーリーは注文されたメニューを確認し、それに合ったカクテルグラスを背後の棚から取り出し、目の前に並べた。すると、カウンターの端の方で座って酒を飲んでいた夫人が、ミサとジョウが腰をかけたカウンターの中央側へ席を移って来るなり、「お嬢……　聞ぃとくれ～。ハーリーはねぇ、わらしの前世をはくしゃくれえじょおらったと言うんよ～」

と、初対面の二人に馴れ馴れしく話しかけてきた。


「まあ、何の話題をしてらしたの？」


　ミサは、人見知りもせずに婦人と会話を始めた。


「らからねえ……、ハーリーがね～え、#ｏｏ ‡で、ぜんせえがあ、わらしの、◇≡，はくしゃくれえじょて･･････∇△∬＊＊￡ なんらって。」

（文章がバラバラ……。それにこの叔母様、所々ダルダ語になっている。きっとダルダから来ているのね。）


ミサはそう思いながらも、何とか夫人の話す言葉を理解していた。


ミサは、ジョウがダルダ人でも、ジョウは国境に近いサバル地方に住んでいる為、ベルシナとの面識が多いせいか、ベルシナ語をあたりまえのようの使っている。

ミサといる時はミサに合わせているらしく、ジョウはその他、母国語であるダルダ語やベルシナやダルダに住むサバドリアンでさえ使わなくなったサバドリア語、そして、留学時に覚えたカムリアナ語が完璧らしい。


商売をしていく上では語学に優れている事は良い武器になると、彼の将来を見通すように、サロンが誉めていたことがあった。